つんぼのおやじ
あるところに、親子(おやこ)づれの、どろぼうがいたんじゃ。おやじのほうは、つんぼじゃった。ある夜、しょうやさまのうちへ、どろぼうに入ろうと思ったが、庄屋さまでは、また、起きていた。そこで、寝るまで、縁(えん)の下で待つことにした。
息子が先に、縁の下へ潜(もぐっ)ていった。おやじがあとからついていったんじゃ。縁の下は、真っ暗(くら)だから、手探(さぐ)りだ。ところが、先に行った息子が、ドスンと、縁の下の柱(はしら)に頭をぶっつけた。そのひょうしに、ぶウーツと、でっかいのをひった。
いくらつんぼのおやじでも、鼻先で、ぶウツとやられたんで、聞こえたんじゃな。びっくりして、
「おい、いま鳴(な)ったのは、てっぽうかい?」と、小さい声で、息子に聞いた。
「てっぽうじゃない。屁(へ)だよ。」
息子も、小さい声でこたえた。だが、そんな小さい声じゃ、おやじには聞えない。おやじは心配になって、
「おい、いまなったのは、てっぽうかい?」って、また聞いた。今度は、さっきより、大きい声でな。それで息子も、さっきより大きい声で、
「てっぽうじゃない。へだよ。」と、こたえた。だが、それでもまだ、おやじには聞えない。そこで、おやじは、もっとでっかい声を張上げた。
「おい、いまなったのはーてっぽうかいッー」
すると、息子のほうは、腹を立てて、
「鉄砲じゃないッ。へだったら、へだッ!」と、どなりかえした。それで、忽(たちま)ち、庄屋さんに見つかって、捕まったということじゃ。
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