人の口
ある百姓が驢馬(ろば)を売りに町へ出かけました。息子と二人でそれを引いて行きました。すると、向こうから人が四五人やって来ました。
「あの人たちは馬鹿ですね。驢馬に乗らないで歩いています。」と言って、笑いました。
父親はなるほどそうだと思って、息子を驢馬に乗せて、自分は歩いて行きました。すると、又向こうから二人ずれの人がやって来ました。
「ご覧なさい。老人が歩いて、その息子が驢馬に乗っていますよ。まるで逆さまですね」と、言いました。
父親はなるほどそれに違いないと思いました。そこで、今度は自分が乗って、息子を歩かせました。暫く行きますと、五六人いっしょの人に出会いました。
「ご覧なさい。老人が驢馬に乗って、子供を歩かせています。全くかわいそうだ。」と言って、通りました。
父親はなるほどそのとおりだと思いました。自分だけ一人乗ってもいけないし、息子だけ一人乗ってもいけない。ですから、今度は二人いっしょに乗りました
すると、その次に出合った人たちは、
「ご覧なさい。あんな小さい驢馬に二人も乗っています。しまいに驢馬が疲れて倒れますよ。かわいそうなことだ。」と言って、行きました。
二人は全くそのとおりだと思って、急いで驢馬から下りました。そして、暫く考えました。
親だけ乗ってもいけないし、子だけ乗ってもいけない。二人いっしょに乗ってもいけないし、また二人いっしょに歩いてもいけない。しかたがないから、驢馬の脚を四本一つに縛って、棒を通して、親子で担いで行きました。 |